<調査レポート>2025都議選・参議院選挙調査1 反フェミニズム認識を陰謀論に吸い上げる参政党
社会調査支援機構チキラボ
【主なトピック】
-
参政党非支持者と比べ参政党支持者ほど、反フェミニズム認識が強い
-
特に男性の参政党支持者で反フェミニズム認識が強い
-
女性の中では参政党支持者の方が、反フェミニズム認識が概ね強い
-
反フェミニズム認識を抱く人ほど、フェミニズム陰謀論も信じる傾向が
1 反フェミニズム的主張の参政党
2025年7月の参院選挙で、大きな「躍進」を見せた参政党。選挙前の1議席から14議席へと増やし、野党第一党の立憲民主党に迫る比例得票率となりました。
その直前の6月にあった東京都議会議員選挙から参院選にかけての、参政党のスローガンは「日本人ファースト」。排外的な言論が急速に出回り、他党もそうした「盛り上がり」に歯止めをかけるどころか便乗し、「外国人問題」が争点化していくことになりました。
外国人への否定的な感情が刺激され、それが参政党支持へとつながっていったこと。こうした感情がYouTubeなどのSNS・動画メディアによって過剰に醸成されてしまった可能性は、昨年に寄稿した記事に詳しい分析がありますので、ぜひご覧ください。
参政党の排外主義的性格は、多くの識者やウォッチャーが懸念を持って発信している一方で、チキラボでは、並行してジェンダーに関わる言動を注視していました。
参院選が公示された2025年7月3日、第一声となる東京都内での街頭演説で、参政党党首の神谷氏は「子どもを産めるのも若い女性しかいない。高齢の女性は子どもは産めない」と発言しました。またその後には「ジェンダーフリーはいらない」「男は男らしく、女は女らしくでよい」といった発言も。
今や国政で一定の勢力をもつ参政党。その党首の発言は、私たちが持つ、性と生殖に対する自己決定権を、国家が侵害するという恐怖を感じさせるものです。
また神谷氏がこうした発言を堂々とできるのは、「ジェンダーフリーやLGBTQは、共産主義者が敵対する国を内部から崩壊させるために悪用している思想戦」という主張があるからでしょう。これは2024年の『参政党ドリル』での記述で確認できます。
「フェミニズム陰謀論」とでも呼ぶべき理論を支柱としながら、ジェンダーに関する発言が選挙戦で行われ、拡散する、という状況にありました。
この主張は明らかにフェミニズムの歴史に反するものです。フェミニズムは参政権や財産権をはじめとした様々な女性の権利獲得の運動から始まりました。そして「男性」と「女性」という性別二元的な考え方や社会制度のもとで生じていた、生きづらさや不平等を取り除くことを目指してきました。人と人とが対等な関係を築くための知であり運動がフェミニズムです。
日本においては大正デモクラシーの婦人参政権運動が源流にあります。もちろん時の政治思想に影響を受けるのは当然ですが、それは共産主義に限定されません。むしろ政治の単位となる国民国家を相対化する視点さえあるのがフェミニズムです。
人間のジェンダーやセクシュアリティを「男性」と「女性」に限り、かつ、男女の間に序列を作り、女性を「産む性」に閉じ込め、第一の居場所を「家庭」に指定するかのような言動は、反フェミニズム的主張となります。このような「反フェミニズム的認識」に対して、どのくらいの参政党支持者が共感しうるのでしょうか。
次に、チキラボが2025年6月〜7月に実施した以下の2つの調査データを使って、参政党支持者の「反フェミニズム認識」を検証していきます。
①全国の有権者を対象に、参院選期間中および投票終了直後の3回にわたって行なった調査。同一対象者を追跡したパネル調査形式となっている。第1回目〜第3回目まで回答した911名の回答を分析。
②東京都の有権者を対象に、都議選後および参院選後の2回にわたって行なった調査。同一対象者を追跡したパネル調査形式になっている。東京都有権者のうち、東京都議選で参政党に投票した人からサンプリングし、2回の調査どちらにも回答した278名の回答を分析。
詳しくはチキラボによる2025年参院選パネル調査の概要をご覧ください。当該ページ【全国グループ】としたデータが①、【都議選参政党投票者グループ】としたデータが②です。
2 「反フェミニズム認識」とは
チキラボの調査では、以下の表に示した4つの認識を「反フェミニズム認識」とし、それぞれの認識に対応する質問文を用意しました。なお、先ほど提示した「フェミニズム陰謀論」からは一旦距離をおき、この「反フェミニズム認識」の参政党支持者への広がりを検証します。
3 参政党・男性支持者ほど反フェミニズム認識を抱く傾向が
チキラボが参院選期間中に全国の人々に3回にわたって行った継続調査のデータ(①)から、反フェミニズム認識が参政党支持者の間にどの程度浸透しているか、分析していきましょう。
参政党への投票有無(参院選比例区)と性別別の4グループに分けて、反フェミニズム認識の指標とした各質問項目の分布を以下にグラフ化しています。
ここから、わかったことは以下3点です。
-
参政党非支持者と比べ参政党支持者ほど、反フェミニズム認識が強い
-
特に男性の参政党支持者で反フェミニズム認識が強い
-
女性の中では参政党支持者の方が、反フェミニズム認識が概ね強い
なお、この結果は、東京都の有権者で参政党投票者を対象とした調査でも、概ね同様の結果が得られています。
4 反フェミニズム認識を抱くほどフェミニズム陰謀論とも結びつく
注意が必要なのは、「反フェミニズム認識」としたものは、概ね伝統的な性規範や性役割分業観であり、ここで示した結果は、慣習に対する距離感を単に示しているだけと解釈できる余地があります。
そこで、「反フェミニズム認識」が、参政党が主張する「フェミニズム陰謀論」と結びつくのか、陰謀論について質問した東京都議選で参政党に投票した方を対象とした調査(②)から確かめました。
ここで「フェミニズム陰謀論」への信用度をとらえる質問として、
「Q 男女平等や同性婚を求める動きは、家族を崩壊させようとする文化共産主義者の企てだ」
を用意し、この考え方について、どの程度「正しい」と思っているかをたずねました。「正しい」の程度を7段階に分け、その中から選んでもらっています。この項目を「フェミニズム陰謀論」指標としました。
結果、「反フェミニズム認識」の高さに比例して「フェミニズム陰謀論」を信頼する度合いも高まるということが明らかになりました。分析で示された値を見ると、一般に社会意識の調査では比較的高い関連性を示す水準ともなっています。
検証に用いた値はガンマ係数と呼ばれるものです。身長や体重のように数値として連続的に測定される変数ではなく、「とてもそう思う」「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「まったくそう思わない」のように順番にだけ意味がある尺度(順序尺度)で測定された2変数について、その関連の強さと方向を示す指標です。値は −1〜+1の範囲をとり、正の値ほど正の関連、負の値ほど負の関連が強いことを意味します。0に近い場合は、両変数の間に明確な関連がないことを示します。正の相関の場合、「反フェミニズム認識」を肯定するほど、「フェミニズム陰謀論」も正しいと思う、という関係を意味しています。
都議選で参政党に投票した人の中にも、「フェミニズム陰謀論」に否定的な方がいるのも事実です。しかし、参政党が提供する「フェミニズム陰謀論」に触れやすい支持者の場合、反フェミニズムの認識を強くすれば、それはすぐに「フェミニズム陰謀論」へと吸い上げられる可能性が高いでしょう。
ジェンダー平等の政策が進めば、特に男性においては剥奪感を抱く場合もあります。それを「フェミニズム陰謀論」へと吸い上げられることを防ぐためにも、社会構造の変化とセットにした男性の「危機」対処の政策が必要ではないでしょうか。
(注)男女別比較は、ジェンダー研究において長く用いられてきた分析手法であり、その目的は差異の「自然化」ではなく、不平等の構造的生成過程を明らかにすることにあります。本分析も同様に、性別による結果の違いを個人の特性に帰属させるのではなく、社会的配置や制度的条件の差異として捉える立場に立ちます。性別を本質的・固定的な属性として捉える立場に立つものではありません。
▶︎次の記事では、参政党を支持する女性たちのジェンダー意識に迫ります。
1月28日にウェビナーを行います。詳細は下記をご参照ください。
the Letterサポーターの方は必ず無償でご参加いただけます。
参政党を支持する女性たちーチキラボ 都議選・参院選調査分析
社会調査支援機構チキラボ 特任研究員 中村知世
https://us06web.zoom.us/webinar/register/3617680249026/WN_8flS_NU9SUq96fSOdnXEWg
*本セミナーでは過去の選挙についての調査分析および、各政党支持者の動向のみとりあげます。
すでに登録済みの方は こちら