<調査レポート>2025都議選・参議院選挙調査2 性役割観と参政党支持はどのように結びついているのか

他党を支持する女性層と比較し、性別役割観を肯定しやすい傾向のある女性の参政党支持者層。参政党を支持する女性たちは、欧米の極右政党と結びつく「トラッドワイフ」や「エプロン軍団」と呼ばれる、女性オンラインコミュニティやインフルエンサーと類似するのでしょうか。女性の性役割観の肯定と、参政党支持との関係を分析します。
the Letter担当 2026.01.22
誰でも

社会調査支援機構チキラボ

【主なトピック】

  • 女性の中では主婦であるほど、性役割観を肯定しやすい

  • 主婦以外の女性では、「子育てについては、男性は女性にかなわない」を肯定する人ほど、参院選で参政党に投票した傾向が

  • 特に子どもがいない非主婦の女性グループで、「子育てについては、男性は女性にかなわない」を肯定する人ほど、参院選で参政党に投票した傾向が

1 トラッドワイフと極右

前稿では、参政党支持者にみられる「反フェミニズム認識」——すなわち女性の規範を伝統的な性役割に限定する認識——の高さと、それがフェミニズム陰謀論とどのように相関しているかを検証しました。 性別による比較では、男性より女性の方がこうした認識を抱きにくいことが先行研究同様に確認されました。しかし、女性内部を詳細に分析したところ、参政党に投票した女性は、非投票層の女性と比較して、反フェミニズム的な考えを肯定しやすいという特筆すべき傾向が明らかになりました。

”「専業主婦」も女性の尊い選択肢”
”「将来の夢はお母さん」という価値観を取り戻す”

これは、参政党の「少子化対策・子育て支援策」に書かれている言葉です(注1)。

性役割意識を支持する女性がいるからこそ、参政党は反フェミニズム的主張を展開できる側面もあるでしょう。

同様の構造は極右政党の台頭する欧米でも見られます。2024年前後から、極右政党やその支持者がかかげる白人男性至上主義を擁護する「トラッドワイフ」や「エプロン軍団」と呼ばれる女性たちのオンラインコミュニティに注目が集まっています。

もちろん伝統的な性役割を女性が肯定すること自体は、歴史的に繰り返されてきたことで特に珍しいことではありません。
しかし、近年の男性至上主義を擁護する女性たちの特徴は、政治インフルエンサーとしての振る舞いに新しさがあることです。

「トラッドワイフ」や「エプロン軍団」と呼ばれるコミュニティの思想的特徴や実態は、Institute for Strategic Dialogue(注2)で研究員を務めるセシル・サイモンによれば、以下のようにまとめられます。

  • 伝統的な性役割を肯定し、夫への服従を美徳とし、家事や子育てを中心とする女性の生活を提唱し、白人男性至上主義思想を正当化する。

  • フェミニストは女性たちに「全てを手に入れることができる」と約束したが、それは詐欺であったとし、フェミニズムを攻撃する。

  • 彼女たちは「専業主婦」というよりは、SNSでの収益化に長けた、コンテンツクリエイター兼ビジネスウーマンである。真に女性を救うことを目的とはしていない。 

  •  極右の政治イデオロギーを巧妙に忍ばせたメッセージを伝えている。

「主婦」という装いで政治的なプロパガンダを流すインフルエンサー女性の存在が、極右政党の台頭と不可分になりつつあるようです。

参政党は「産む性」として女性を特徴づけ、少子化対策の文脈で「主婦」や「お母さん」という生き方に女性を導こうとしており、まさにトラッドワイフ的な価値観が体現されています。では、こうした価値観は、参政党支持者、特に女性にどの程度広がっているのでしょうか。

この記事では、性役割の肯定と主婦の関係、そして参政党支持への影響を検証していきたいと思います。使用するデータは以下のものです。

  • 全国の有権者を対象に、参院選期間中および投票終了直後の3回にわたって行なった調査。同一対象者を追跡したパネル調査形式となっている。第1回目〜第3回目まで回答した911名のうち、女性449名の回答を分析。

詳しくはチキラボによる2025年参院選パネル調査の概要をご覧ください。当該ページ【全国グループ】としたデータを使用します。

2 性役割を肯定するのは誰か?

まず分析結果を簡潔に示します。得られた結果は以下の通りです。

● 主婦層:
  ○ 性役割の肯定傾向:高い
  ○ 参政党支持との結びつき:弱い(直結していない)

● 非主婦かつ子どもがいない層:
  ○ 性役割の肯定傾向と参政党支持が連動(相関の可能性あり)

今回の分析では「主婦」を「既婚者で無業」もしくは「既婚者で非正規雇用労働者」と定義しました。

「主婦」といえば「外で仕事をしていない人」を純粋にイメージする方もいると思います。しかしパート労働者の女性であっても、家庭での役割の方が大きいという自己認識がある場合には「主婦」と名乗ることもあるでしょう。また実態としても、産業界が労働力不足を女性に求めつつも、家庭役割から女性を完全に引き離しはしなかったことから、現在は、専業主婦割合は低下し、パート労働に従事する主婦が主流となっています。

つぎに「性役割」をあらわす具体的な認識として、以下の3つの質問項目を使っていきます。

  • 「人間は男性か女性かのみである」

  • 「男は男らしく、女は女らしくあるべきだ」

  • 「子育てについては、男性は女性にかなわない」

ひとつずつ分析を進めていきましょう。

――分析1:主婦か否かと性役割意識の関係

分析結果は、「人間は男性か女性かのみである」「子育てについては、男性は女性にかなわない」の二つの認識を主婦ほど肯定する傾向があることが確認できました。一方、「男は男らしく、女は女らしくあるべきだ」は有意差が確認できませんでした。

――分析2:性役割の肯定と参政党支持との関係は主婦かどうかで違いはあるか

統計的検定を安定化するため、「子育てについては、男性は女性にかなわない」への回答を「とてもそう思う」と「どちらかと言えばそう思う」を合算して「そう思う」とし、「どちらかといえばそう思わない」「まったくそう思わない」を合算して「そう思わない」とまとめています。

有意差が確認できたのは、「子育てについては、男性は女性にかなわない」に注目した分析です。結果は、非主婦層については、この意見を肯定する人ほど参政党に投票する傾向があることがわかりました。

下記のグラフの下段の横棒グラフ3本(非主婦層)に注目してください。この3本のグラフの赤い部分、参政党投票者の割合が、「子育てについては、男性は女性にかなわない」について「そう思う」(1本目)の棒グラフほど、高くなっています。

――分析3:非主婦層の性役割認識肯定と参政党支持の関係は、子育て経験の有無でさらに違いはあるか

分析2の「主婦ではない層」で、「子育てについては、男性は女性にかまわない」を肯定する人ほど、参政党に投票する傾向が確認できました。それを受け、分析3では、さらにこのグループを解剖し、子育て経験があるかの違い(子どもがいるか否か)に注目した分析をしています。

結果は、子どもがいない、かつ、「子育てについては、男性は女性にかなわない」を肯定する人ほど、参政党に投票する傾向があることが統計的に明らかになりました。

下記のグラフの下段の横棒グラフ3本(子ども無層)に注目してください。この3本のグラフの赤い部分、参政党投票者の割合が、「子育てについては、男性は女性にかなわない」について「そう思う」(1本目)の棒グラフほど、高くなっています。

3 トラッドワイフに感化され極右を支持する流れは日本でも

トラッドワイフがSNSで流布するような、性役割を肯定し美化するイメージ自体は、日本の「主婦」に受容される可能性はあるでしょう。ただし、そこから参政党支持へと明確につながっていくことは、2025年7月の参院選時点では確認されませんでした。

性役割を肯定する傾向にある女性が、現状、どの程度トラッドワイフ的なイデオロギーにSNSで接触しているかはわかりません。そしてその傾向がすぐさま参政党支持に結びついているわけではない、というのが概ねの現在地点です。

対して、現在主婦ではなく(子育て未経験の層では特に)、性役割を肯定することが参政党支持につながる要因になる可能性が示唆されました。

このことから、トラッドワイフ的なインフルエンサーと極右政党が接近することで、女性支持者が拡大する余地は、日本にもあるといえるでしょう。「反フェミニズム」と投票行動を結びつける、新興インフルエンサーや新興政党の動きがどうなるのか。参院選ではまだその動きは目立ちませんでしたが、今後の動きに注目が必要です。

次の記事では、伝統にこだわる参政党の教育政策に注目。親たちの支持動向に迫ります。

(注1)https://sanseito.jp/political_measures_2025/specific_policies/
(注2)国際的に活動する、民主主義や人権保護のための対策組織。過激主義やヘイト、分断、偽情報の拡大に対応する研究や対策の開発を行っている組織。https://www.isdglobal.org/
【引用文献】
Cécil Simmons 2025 “Apron-clad armies: women for male supremacy”, Ctrl Hate Delete: The New Anti-Feminist Backlash and How We Fight It, Policy Press, pp.80-103.

***

1月28日にウェビナーを行います。詳細は下記をご参照ください。the Letterサポーターの方は必ず無償でご参加いただけます。
参政党を支持する女性たちーチキラボ 都議選・参院選調査分析 
社会調査支援機構チキラボ 特任研究員 中村知世
https://us06web.zoom.us/webinar/register/3617680249026/WN_8flS_NU9SUq96fSOdnXEWg
*本セミナーでは過去の選挙についての調査分析および、各政党支持者の動向のみとりあげます。

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