【レポート】シリア紛争における"認知戦“の経緯 3/8

情報を武器として扱い、人々の“認知”を操作する「認知戦」は現実の戦争でどのように行われるのか。本レポートでは、シリア紛争における認知戦の経緯、活動主体となったウェブサイトやメディア、インフルエンサーなどの動きとその影響を分析しています。本レポートは、新領域安全保障研究所の2025年度委託研究として軍事ジャーナリスト・黒井文太郎氏に依頼しました。
the Letter担当 2025.11.19
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レポート「シリア紛争における"認知戦“の経緯」を全8回にわたりお届けします。

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実在が疑問視されている美女インフルエンサーも登場

そんなインフルエンサーのひとりがSyrian Girlとのハンドルネームでアサド擁護のYouTubeチャンネルを運営したマラム・ススリだ。彼女はシリア生まれだが、幼少期に家族でオーストラリアに移住したシリア系オーストラリア人だが、熱烈なアサド支持者で、2012年からSNS活動を開始した。当時25歳で、瞬く間に数万人もの登録者を得て、アサド擁護言説のスターになった。現在も約10万人の登録者がいる。

ススリは「9・11は米国政府の自作自演」「アルカイダとISはCIAの手先」「エボラ出血熱は米国の生物兵器」などと主張する典型的な陰謀論者だが、根拠のないアサド擁護の言説が陰謀論系ネット界隈では支持され、ファンを増やした。

ススリは、元KKK最高幹部で元ルイジアナ州下院議員でもある白人至上主義の陰謀論者として有名なデビッド・デュークのポッドキャストや、トランプ支持者の極右系陰謀論者として、いまや米陰謀論界の大スターになっているアレックス・ジョーンズが運営する『Infowars』にも登場した。もともとただのブロガーであり、ユーチューバーだった彼女だが、こうしてインフルエンサーになったことで、親アサド系メディアからコンタクトされ、やがて“ジャーナリスト”として登場するようになった。ロシア国営『RT』、イラン国営『PRESS TV』、ヒズボラの衛星TV『アル・マヤディーン』などである。

さらには、ロシアのWebメディア『New Eastern Outlook』(NEO)にも寄稿したが、NEOはロシア情報機関「対外情報庁」(SVR)の情報工作用メディアだとして、米財務省から制裁を受けているメディアである。(1)

Syrian Girl(ススリ)はおそらく最初からアサド政権やロシアの工作機関が作ったキャラクターではなく、シリアにルーツを持つアサド支持者の陰謀論者が、そのいかにもギャル的な風貌からネットで人気となったことで、米国の陰謀論インフルエンサーが目を付け、さらにロシアなどのプロパガンダ部門が目を付けたという順番だろう。

ネットで人気が出やすい女性キャラクターだが、シリア紛争では、実在が疑われている影響力のきわめて高いインフルエンサーもいる。サラ・アブドラという女性で、Xのフォロワーが65万人、フェイスブックのフォロワーが2.9万人いる。主にXで、アサド擁護とプーチン擁護のプロパガンダを拡散している。2018年に、当時SNSで流されていたシリアの民間救助団体「ホワイトヘルメッツ」へのネガティブキャンペーンで影響力が大きかったアサド支持アカウントを調査会社のグラフィカ社が調査したところ、1位が突出してサラ・アブダラだったという。(2)

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