<調査レポート>2025都議選・参議院選挙調査3 「親」だからではなく「支持者」だから賛成する? 参政党の教育保守化を支えるもの
社会調査支援機構チキラボ
【主なトピック】
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東京都の参政党支持者は東京都の有権者平均と比べると、教育政策を重視し、参政党の保守的な教育内容も支持する傾向に
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参政党の支持を継続しているという要因の方が、子どもの有無という要因よりも、教育政策重視・保守的教育賛成を促す要因として重要
1 保守的教育政策をかかげる参政党
記事1、記事2で参政党支持者のジェンダーに関する意識を検証してきました。
参政党が性役割にこだわる理由。それは性役割が日本の伝統に根ざしているとの考えも関係しているようです。「伝統」にこだわる参政党。それは、性役割の価値づけだけではなく、教育目標にも色濃く表れています。
例えば参政党の憲法草案には次のような記述があります(注1)。
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国語と古典素読、歴史と神話、修身、武道及び政治参加の教育は必修とする
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教育勅語など歴代の詔勅、愛国心、食と健康、地域の祭祀や偉人、伝統行事は、教育において尊重しなければならない
政策集では次のような記述があります(注2)。
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戦国時代以降の欧米諸国との交流について、史実に基づく歴史教育
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欧米の道徳的価値観から日本古来の道徳的価値観の重視
こうした保守的な教育観の背景には、先の大戦を「大東亜戦争」と呼び、欧米によって「日本は罠にはめられた」とする考えや、日本軍の加害性を矮小化・否定する考えがあることも注目しておく必要があるでしょう(注3)。
参政党が支持を伸ばすということは、学校教育の保守化も懸念されます。
現在、市区町村議会には合わせて144名の参政党議員が在籍しています(注4)。市民と最も近い地域の政治家は、保護者の陳情などを受けたり、議会で教育委員会に圧力をかけることなど、実は、公立学校に「市民の声」を直接届けられるポジションです。学習指導要領が大きく変わることはないかもしれませんが、地元での運動は教育現場に近いという強みがあり、影響力を持ち得ます。
参政党の教育保守化の運動に保護者が動員される可能性は、注目しておくべき動きといえます。
2 アメリカにおける学校教育の保守化
そこで参考になるのが、急速に学校教育の保守化が進むアメリカです。保守化を示す象徴的な動きをいくつか紹介します。
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2020年に第一次トランプ政権は、制度的人種差別や構造的差別を強調する教育を批判し、愛国教育を推奨する、「1776委員会」設置。
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「批判的人種理論(Critical Racial Theory)」を禁止する州法が2021年ごろから続々と成立。「批判的人種理論」と呼ばれるものとは、「白人が人種主義差別者だとの罪悪感を白人の子供達に植え付ける教育」と保守派の人々が解釈しているもので、実際にこうした教育がなされているとの想定のもと、教育現場を攻撃をしている。
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性教育バッシングや、学校図書館や公立図書館で人種問題や性的マイノリティを扱う資料などが検閲、禁書、排除される事例が相次ぐ。
こうした学校教育の保守化を支える有権者団体として注目されている、Moms for Libertyと名乗る保護者団体があります。この団体は、「子どもの教育」に対する「親の権利(#Parental Rights)」を掲げています。リベラル的教育に反対し、教育委員会などを通じて親として学校教育の内容に関与する、選択・検閲できる権利を主張することを重視。さらにこの団体と保守政治家との連携にも注目が集まっているところです(注5)。
日本でも同様に「親」というポジションにある人々が、リベラルな教育を子どもたちに受けさせない権利があると考え、保守的な教育政策に共感して参政党を支持する、という流れはありうるのでしょうか。
この可能性を、チキラボが東京都民の有権者を対象として行った次の調査データを使って分析します。
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東京都の有権者を対象に、都議選後および参院選後の2回にわたって行なった調査。同一対象者を追跡したパネル調査形式になっている。東京都有権者のうち、東京都議選で参政党に投票した人からサンプリングし、2回の調査どちらにも回答した278名の回答を分析。
詳しくはチキラボによる2025年参院選パネル調査の概要をご覧ください。【都議選東京都全体グループ】【都議選参政党投票者グループ】としたデータです。
3 参政党の教育政策は、「親」ほど支持しやすいのか?
得られた分析結果は以下2点です。
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参政党支持者は東京都の有権者平均と比べると、教育政策を重視し、保守的な教育内容も支持する傾向にある。
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参政党の支持を継続しているという要因の方が、子どもの有無という要因よりも、教育政策重視・保守的教育賛成を促す要因として重要。
分析手順を説明します。
教育に関連した以下の質問項目を分析に使っていきます。
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「Q あなたは参院選での投票先を決める際、次の政策テーマについて、どの程度重視しましたか。 選挙区、比例区での投票について、総合してお答えください。」との質問に対する「子育て・教育政策」の項目
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「Q 以下は参政党の憲法草案の主張や内容です。実際にこのような憲法に改正することに、どの程度賛成できますか。それぞれについて、回答してください。」に対する「国語と古典素読、歴史と神話、修身、武道および政治参加の教育は必修とする。」および「教育勅語など歴代の詔勅、愛国心、食と健康、地域の祭祀や偉人、伝統行事は、教育において尊重しなければならない。」の項目
分析結果を比較するグループを説明します。
● 分析1
○ 「参政党投票者」=東京都議選で参政党に投票したグループ
○ 「東京都全体」=東京都全体の有権者グループ
● 分析2・分析3
○ 「参政党投票者」=東京都議選で参政党に投票し、参院選でも参政党に投票したグループ、「参政党支持継続」グループとも表記する場合もあり
○ 「参政党非投票者」=東京都議選で参政党に投票し、参院選では参政党に投票しなかったグループ、「参政党支持離脱」グループと表記する場合もあり
では分析結果をひとつずつ確認していきましょう。
――分析1:参政党支持と教育政策意識との関係
分析より、東京都議選で参政党に投票したグループの方が、東京都全体の有権者平均と比べ、参院選で教育政策を重視して投票した人の割合が高いことがわかります。保守的な教育内容の実施に対する賛否についても、参政党投票者は圧倒的に「賛成派」が多くなっています。
――分析2:参政党支持継続・離脱グループ別に見た教育政策意識との関係
有意差があったのは保守的な教育内容への賛否にかかわる2つの項目です。支持継続者の方が「賛成」度合いが高くなっています。参政党を強く支持する人ほど、非常に保守的な教育内容にも賛同を示しやすいことがはっきりとわかります。
――分析3:参政党支持継続・離脱グループ別に見た教育政策意識との関係と子どもの有無の関係
参政党支持継続グループと支持離脱グループのそれぞれを、さらに子どもの有無別にわけて見た結果、概ね、有意差は得られない結果となりました。つまり、保守的な教育内容の重視度は、子どもがいるかいないかよりも、参政党を支持し続けているか否か、のほうが重要であるといえます。
4 参政党支持者における「親」としての権利意識の今後は?
参政党支持者には、教育政策に関心が高い人が多いという傾向がはっきりと見られます。しかし、その中で「親」という立場にある人がとりわけ教育に対する政策要求が強いという関係は、今回の分析では確認されませんでした。
つまり、参政党そのものを強く支持する人が、親か否かにかかわらず、保守的な教育内容にも賛同しています。
アメリカの保護者団体が反リベラル的な教育内容を求め、関与を強めている事例を紹介しました。対する日本は、戦前の軍国主義的学校教育を反省し、戦後は民主的な教育改革を行ってきました。1990年代にはジェンダー平等を求める教育改革も進められましたが、2006年発足の第一次安倍政権のもとで保守化。教育基本法が改正され、道徳教育の教科化や愛国心教育が推進されてきました。そして、性教育も「はどめ規程」と呼ばれるものがあり、性と生殖に関する健康と権利の観点から小学校段階より性行為を取り扱うような教育内容にもなっていません。
日本は、保守的な「親」にとって、自分たちが望むような教育を受ける権利が子どもたちから「奪われている」あるいは、自分たちが学校教育に関わる権利が「奪われている」といった被害者的な意識は芽生える土壌ではないとも言えます。
参政党の教育政策への要求が今後、親を取り込む可能性があるのか。学校教育の保守化動向にも注意が必要です。
注1)https://sanseito.jp/new_japanese_constitution/
注2)https://sanseito.jp/political_measures_2025/specific_policies/
注3)Tansa, 2025年7月17日配信記事「参政党・神谷宗幣代表の過去19年間の発言を総ざらい 議会質問、書籍、ブログ、YouTube、雑誌 差別や戦争助長する発言の数々」
https://tansajp.org/investigativejournal/12182/
注4)総務省 地方公共団体の議会の議員及び長の所属党派別人員調等(令和6年12月31日現在)
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/syozoku/r06.html)
注5)https://www.momsforliberty.org/
この団体については、2022年9月11日配信の毎日新聞「リベラルな学校教育を批判する「ママたち」急増 共和党も後押し」との記事で詳細に紹介されています。https://mainichi.jp/articles/20220909/k00/00m/030/380000c
1月28日にウェビナーを行います。詳細は下記をご参照ください。the Letterサポーターの方は必ず無償でご参加いただけます。
参政党を支持する女性たちーチキラボ 都議選・参院選調査分析
社会調査支援機構チキラボ 特任研究員 中村知世
https://us06web.zoom.us/webinar/register/3617680249026/WN_8flS_NU9SUq96fSOdnXEWg
*本セミナーでは過去の選挙についての調査分析および、各政党支持者の動向のみとりあげます。
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